モバイルインターネットのパケット定額プランの破綻が近い事は、過去何度か当ブログでも取り扱ってきました。過去の文章を引用すると、上位数%のヘビーユーザーが総トラフィック半分近くを占有しているというのですから、穏やかではありません。
携帯キャリアのみならず、一般ユーザーにも悪影響を及ぼしつつある、この「ヘビーユーザー」とはどんな人達なのか? 今回は謎のベールに包まれたその正体を探ってみました。
ヘビーユーザーはどこにいる?
ここで一人の友人A君を紹介したいと思います。 彼は今回のエントリーを書くきっかけとなった最重要人物です。
A君のスペックは以下の通り。
・30代男性(彼女ナシ)
・スマートフォン歴3ヶ月(iPhone 4)
・PCなし
ある日A君から「携帯からスマートフォンに変えてから携帯代が高くなったみたい」と相談を受けました。明細を見せてもらうと、案の定パケット料金は上限に達していました。
これが原因だろうな~なんて明細をしばらく眺めていたところ、パケット通信の内訳をみて私は腰が抜けるほど驚いてしまいました。
A君の月の総パケット数は 5,000万 にも達していたのです。 バイト数に直すと約6GB。スマートフォンユーザーの平均が約500MBである事を考えると、1人で12人分のトラフィックを占有している状態です。
何にこれだけのデータ量を使ったのかA君に問いただしても「分からない」の一点張り。粘り強く尋問を続ける内に、その過剰なデータ通信量の実態が明らかになってきました。
まずA君の自宅には無線LAN環境がありません。ソフトバンクから無償で無線LANルータを貰ったものの、インターネット環境そのものが無い為、自宅でも3G回線でiPhoneを利用していたようです。そして 3G回線のみでYouTubeを初めとする動画ストリーミングサービスを頻繁に利用していた事も新たに判明。
かくしてA君は私から小一時間説教を受け、差し当たり安価なインターネットサービスを契約する事になりました。
無自覚なヘビーユーザー
私はスマートフォンのヘビーユーザーというと、テザリングを長時間使ったり外出先からVPNで自宅のPCとファイルを頻繁にやりとりしたりといった、良く言えばリテラシーの高い、悪く言えばオタク気味なユーザーを想像していました。しかし冷静に考えてみると、 テザリングはバッテリーの消耗が激しい為に外出先で長時間使用する事は不可能。またVPNでファイルをやりとりする事も一時的なケースが多いようにも思え、私が想像していたヘビーユーザー像は現実的には多くは存在しないのかもしれません。
そして実際にこうして出会ってみると、その正体はデジタルオタクとは正反対のユーザー。それどころか自分がヘビーユーザーであるという自覚も無い様子。Wi-Fiの方が通信スピードが速い事はもちろん、ソフトバンクでは1,000万パケットを超えると速度規制があるという事も、A君は知りませんでした。
もちろん全てのパケットヘビーユーザーがA君と同じ環境にあるとまでは言いませんが、通信規制という強制力をもってしても数GB以上の通信を行うユーザーが減らない事を考えると、同様の無自覚なヘビーユーザーが多いのではないかと私は思います。
「ヘビーユーザー予備軍」はまだまだ増えそう
新し物好きやガジェットオタクといったいわゆるアーリーアダプターのものであったスマートフォンは、いまや市民権を得て一般的なユーザーも所有する時代になりました。携帯キャリアもリリースする製品の大半をスマートフォンにシフトしており、今後色々な層に行き渡る事が予想されます。
これは自ら積極的に調べ理解する事が無い、受動的にスマートフォンを選択するいわゆるA君のような層が増えてくる事を意味します。
無線LANの普及率は年々増加傾向にあるそうですが、2010年の時点で世帯別普及率は約60%。約40%は自宅に無線LAN環境が無いという事になります。現在のスマートフォンの隆盛を考慮すると、無線LANを初めとするデータオフロード手段を持たないスマートフォンユーザーの数は更に増えていくのではないかと危惧しています。
携帯キャリアにおいては、こういったユーザーに現状を分かりやすく理解してもらい協力してもらう為のツールの作成が必要ではないでしょうか。最近よく目にする電力会社の「電気予報」のように、「トラフィック予報」なんて物はいかがですか?