9月も終わりを迎え、秋の訪れを感じさせるある日の深夜。日経ビジネスオンラインによる「auがiPhone 5の発売をまもなく開始 」という衝撃的なニュースが飛び込んできました。
KDDI、「iPhone5」参入の衝撃(日経ビジネスオンライン)
【速報】KDDI版iPhone 5、今度は「発売時期が2012年になる」と報道される(GIGAZINE)
IT系のポータルサイトに限らず様々なメディアが今、この話題で持ち切りです。過去に当ブログでこの手の話題をかなり取り上げていた事もあり、数人の読者の方から「検証記事を書かないのか?」という質問を頂きました。
iPhone by auの実現の可能性についてはこの際置いておいて、実現したらどのような事が起き得るかを検証してみたいと思います。
「iPhone by au」のココに期待!
キャリア間の競争によるサービスの充実

auがiPhone取り扱いに参入するにあたりユーザーにとって最も期待できるのは、iPhone向けサービスの質の向上と低廉化でしょう。
iPhoneが日本に登場してから3年が経ちますが、取り扱いキャリアはソフトバンク一社でした。ソフトバンクは自社のラインナップの中でもiPhoneをかなり優遇していましたが、それでもauが参入するとなれば、話は違うはず。料金引き下げやエリア拡大の前倒し等による引き留め工作が期待できます。一方のauにおいても、先行するソフトバンクの料金体系は無視できないはず。従来のパケット定額料金の見直しが必要となるでしょう。
どのような業界においてもサービス提供を独占的に行う企業の存在は、 消費者にとってマイナス面こそあれ、プラス面に働く事は少ないはず。NTTドコモが盲目的にi-modeに固執する限り、ここはauに頑張ってもらう他なさそうです。
ユーザー数の底上げによる業界の活性化

(photo:appbank store名古屋店)
アメリカでVerizonがiPhoneの取り扱いを発表した際、既にiPhoneを求めている人はAT&Tで購入しており、ほとんどがAT&Tからの移住組になるのではないかという予想が支配的でした。しかしいざ発売が開始されると、iPhone購入者の大半を既存Verizonユーザーと新規契約者が占めており、AT&Tからの移動は予想よりはるかに少なかったそうです。現にAT&Tの加入者数は、VerizonのiPhone発売開始の前後でほとんど変化が無かったんだとか。
つまりアメリカにおける新たな取り扱いキャリアの登場は、単なるキャリアの数のやりとりに留まらず、iPhoneユーザー数を全体的に底上げする効果があったと言えます。
この現象は新規iPhoneユーザーのみならず、既にiPhoneを所有しているユーザーにも大きな影響を与えるでしょう。市場が大きくなればなるほど、様々なプレイヤーが参入してきます。それはアプリ開発者しかり、アクセサリーメーカーしかり、修理・カスタム業者しかり。有用で魅力的なアプリや製品、サービスが数多く出回るようになれば、ユーザーにとって大きなメリットとなる事は間違いありません。
「iPhone by au」のココが少し心配
音声とデータの同時通信の可否

同一の通信方式である米VerizonがiPhoneを導入した際に多く出た不満が、音声通話とデータ通信を同時に行えないという点です。通話しながらネットで探し物をしたり、バックグラウンドでアプリを起動しながら着信を受けるといった使い方は大きく制限を受けるわけです。通話を頻繁に行う人は、その都度作業が中断される為にちょっとしたストレスになるかもしれません。逆にiPhoneであまり通話をしない人にとってはあまり問題にならないでしょう。
MMS(キャリアメール)の運用

現在iPhoneではソフトバンクのMMSが利用できます。これはVodafone時代に国際標準のMMSを導入した事で、iPhoneでもそのままMMSが使えるといった背景があります。一方のauは独自のMMSを運用しており、国際標準に準拠していない為に使う事ができません。(これはドコモにも言えます。)
SMSのキャリア間の相互接続が始まったとはいえ、日本は他の国では類を見ないほどユーザーはMMSに依存しています。これはモバイルインターネットがi-modeから始まった歴史と関係があると言われています。 現時点でドコモやauはAndroidスマートフォン向けにキャリア独自のメーラーアプリを提供して急場を凌いでいますが、このメーラーアプリの評判は押し並べてよろしくない。
「じゃあ、MMSを国際標準にすればいいじゃないか」という意見が出てきそうですが、一からの構築になる為にそこには莫大な費用がかかると言われています。ソフトバンクの通信品質がイマイチな理由は、vodafone時代にMMSシステムの構築に予算がかさみ、他まで手が回らなかったからではないかとすら言われているほどです。
auとソフトバンクでは、その通信品質において大きな差があるという印象が強いのですが、ことメールに関しては逆転しそうです。
「iPhone by au」のココがとても心配
周波数帯の問題

auがiPhoneを導入するにあたり一番の障害だと考えられていたのが、使用する周波数帯の問題です。
関連記事: auからiPhoneが出る可能性をもう一度だけ検証してみる ~前編~
詳細は上記のまとめ記事をみてもらうとして、新800MHzのバンド幅5MHzのみという利用環境はどう贔屓目にみてもiPhoneを捌くには無理があるように思えます。iPhone 5がWimaxを搭載するといったサプライズでも無い限り。このままであれば、都市部を中心にiPhoneユーザーが集まった時に阿鼻叫喚のパケット障害が起きるのは火をみるより明らかです。場合によっては、LTEサービスそのものを先送りせざるを得ない状況も考えられます。
今回の日経ビジネスの報道に関して、私の頭の中の?マークがずっと消えない点はこれです。この点について日経やauより納得できる説明が無い限り、iPhone by au には怖くて飛び付けない。個人的にはそう感じています。
この企業の動きに注目
今回の報道に関してその信憑性を100%の精度で確かめる手段を、我々個人ブロガーは持ち合わせていません。ただ最後に一点だけ、皆様に注目してもらいたい企業をお伝えしたいと思います。
それはアメリカの携帯キャリアのSprintの動向です。
Sprintは今までiPhoneの取り扱いがありませんでしたが、この秋よりiPhone 5の取り扱いを始めるようだと米メディアでは繰り返し報道されています。面白いのはこの件についてSprintの幹部本人が語っているという点。仮に今秋つつがなくSprintがiPhone 5をリリースすれば、事前のリークをAppleが目をつぶったという事。逆に突然SprintがiPhone 5の発売を中止すると発表すれば事前のリークがAppleの逆鱗に触れた可能性が高いという事。
これを今回の報道と照らし合わせて観察すれば、また違った楽しみ方ができるのではないでしょうか。
こんばんは
たしかに、このリークの結果どうなるのか?楽しみです。
クック船長の采配が楽しみとも言えます。