現状の携帯キャリアにとってiPhoneとは「飲まざるを得ない毒薬」といった所でしょうか。
WSJは、Appleの2012年の第一四半期がiPhone 4Sの好調な売れ行きに牽引され記録的な数字の着地が予測される一方で、携帯電話キャリアにおいてはそれが利益に直結していない現状をレポートしています。
VerizonはiPhone 4S発売後に多くの新規ユーザーを集めましたが、第4四半期の業績は予想されたほど芳しくは無いようです。これはiPhone新規契約者へのインセンティブが大きく関係していると見られています。
Apple iPhone Will Drag Down Telecom Profits
iPhoneに対して他の端末以上にインセンティブの額を高めている事が原因である事は明白ですが、その背景にはアメリカにおいてiPhoneを取り扱う競合先が増えた事も関係しているようです。
また野村証券の在米アナリストは、AT&TがiPhoneユーザーの増加に伴い増え続けるデータトラフィックへの対応に、新たな設備投資を余儀なくされている現状を踏まえて以下のように発言しています。
「AT&Tの株主に入るべき利益が、そのままAppleの株主に還元されている。」
日本では更に深刻な現状が
上記はアメリカの携帯キャリアについての記事ですが、日本でも状況は同様であると思われます。むしろ諸外国に比べてiPhoneの販売価格が相対的に安く、発生するインセンティブの金額も高いであろう事を考えると、より深刻な状況かもしれません。
Androidスマートフォンのように自由に販売価格を決める事が出来ない。アプリや楽曲販売による手数料も見込めない。しかしデータトラフィックは人一倍喰うので設備増強を必要とする。
「収益が出しにくい」が「MNP増のために取り扱わざるを得ない」という現状は、iPhone販売においては万国共通のようです。auが出し渋っていたのも、ドコモが未だ取り扱いをしないのも、こういった背景がある事に一因があるのかもしれません。
携帯電話そのものを再定義し、人々のライフスタイルを変えた偉大なプロダクツは、遠い極東の無線通信のビジネスモデルをも破壊し、再構築しようとしているのでしょうか。
(via:TNW)