Ciscoは以前発表した「2011~2016年のモバイルデータトラフィックの予測」を更新しました。
その更新内容はあまりに衝撃的で、将来のモバイルインターネットに暗雲が立ち込める物となっております。
一部ご紹介しましょう。
2016年の総データトラフィックは2011年に比べて18倍に
2016年のモバイルデバイスの数は世界人口を抜き100億台へ
2台持ち人口も増加傾向へ
現在の携帯電話全体におけるスマートフォンの割合は12%ですが、モバイルデータトラフィックの82%を占めているというデータもあり、爆発的に増加するトラフィックはスマートフォンやタブレットの普及によるものだと結論付ける事が出来ます。
国別で見るとどうでしょうか?
アジアを含む環太平洋地区の伸びが、他の地域を圧倒しています。その要因の一つが中国。中国のトラフィックは現時点では全世界のトラフィックにおいて5%未満ですが、2016年には10%を超えると予想されています。
中国の好景気がこのまま続けば世帯収入も上がり、スマートフォンを所有する層も増えていくというのが数字の根拠なのでしょう。
それでは携帯キャリアの期待を一手に受ける、LTEはどうなるのでしょう。
http://ciscovni.com/gist/index.html
2011年時点で4Gネットワークは従来のネットワークに比べて28倍以上のトラフィックを発生させている。5年後にはユーザーシェアは6%となり、総トラフィックの36%に至る。
これはヤバイ。トラフィックの緩和どころか爆発の引き金になる予感に満ち満ちている。28倍というのはより速い回線サービスを求めたヘビーユーザーの仕業だとしても、5年後には3Gユーザーに比べて平均で9倍のトラフィックを発生させるという恐るべき予測。
「回線速度が速い分、DL時間が短縮され帯域を占有するデバイスの数が減る」というのが携帯キャリアのLTE導入を急ぐ(表面上の)理由ですが、まるで逆の傾向に。その理由は以下のグラフを見れば分かります。
2011年度においてモバイルストリーミングが全トラフィックの50%を超えており、2016年には66%に達する。
モバイルデバイスの回線速度が速くなる事でYouTubeやNeflixといったビデオストリーミングサービスの需要も比例して増加すると見られています。
またハードウェアの性能の向上でより高解像度の動画にも対応し始めている事が、トラフィックの増加に拍車を掛けているのでしょう。スマートフォンやタブレットによる動画視聴は、将来的に大きな規制の対象となる可能性が高いと思われます。(ソフトバンクは現時点でも規制対象になってるような物ですが)
スマホユーザーの明日はどっちだ
それでは、現在携帯キャリア各社が行っているデータオフロード(3G回線以外にトラフィックを逃がす)大作戦は上手くいっているのでしょうか?
スマートフォンやタブレットにおける、Wi-Fiやフェムトセルへのデータオフロードの割合は2011年で33%、その後減少傾向が続き2016年度は22%となる。
以外と言ったら失礼ですが、かなり検討しているように見受けられます。しかし割合が減少傾向では、18倍に増加したトラフィックに対しては焼け石に水な状態です。
この割合を上げていかないとキャリアの設備投資がトラフィックの増加を取り込めなくなる、いわゆるXデーを迎えるのは確実。
現時点で考え得る対策として、3G/4GとWi-Fiとのハンドオーバーをチップセットレベルで行うと共に、Wi-Fiスポットを相互接続するといったある種の強制力が必要となる方針でデータオフロードの割合を上げていく他はないのでしょう。しかし少なくとも日本の携帯キャリアにそれを実行出来る甲斐性は無い。それは今のWi-Fiスポットの乱立を見れば明らか。
法整備や仕組み作りを含めて総務省が音頭をとっていく他は無いと思われますが、それでも上手くいくかは未知数。結末は誰にも分かりません。
現実的に考えると、金銭的な面なのか使用制限といった使い勝手の面なのかは分かりませんが、最終的にはユーザーがこのツケを払う事になるのでしょう。
モバイルインターネットの未来は、残念ながら私達が思っているほどバラ色な物だけではないようです。
(via:Cisco)