NTTドコモから人事異動が発表され、現山田社長から経営企画部長の加藤新社長体制への移行が決定しました。
記者会見の中で加藤新社長はiPhoneの取り扱いの可能性についての質問が上がると「現状では導入は難しい」と回答しました。
これを受け、様々なマスコミやブログサイトにおいて「何故ドコモはiPhoneを取り扱わないのか」についての議論が、再び(三たび?)活発になってきました。
「エリアメールが非対応だからだ」
「dメニューを初めとするドコモ独自コンテンツをプリインストール出来ないせいだ」
「端末開発に自社の設計思想が反映されないのが理由だ 」
「総務省の意向が国内メーカーの保護に働いているからではないか」
etc・・・。
もちろんこれらは、iPhoneを導入するに当たってのハードルではありますが、ドコモがiPhoneを取り扱わない直接的な理由ではないと、私は思っています。
それでは直接的な理由とは何なのか?
私が考える答えはシンプル。「iPhoneを取り扱うと収益が下がる可能性が高い」からです。
以外と儲からないiPhoneビジネス
海外での例を挙げてみましょう。
昨年度に155億ドルという巨費を投じてiPhoneを獲得したアメリカの携帯キャリアであるSprintですが、先の決算発表の場でヘッセCEOは以下のように述べました。
「iPhone 4Sは好調な売れ行きだが、iPhone単体で収益を黒字するには2015年までかかるだろう。」
またAT&TのCEOもiPhoneはAndroidやWindows Phoneに比べて利益率が低い事を認めており、今後はメーカーと協力して「iPhone以外の」の端末開発に力を入れる事を表明しています。
この利益率の差は、キャリアが負担する販売促進費の額が、iPhoneだけ高い事に起因しているようです。なんせ売値を指定してくるのはAppleだけですから。
また利用可能な周波数帯が端末側でカスタム出来ない為に、キャリア側でネットワーク側の調整を行う必要がある事も、負担増の原因となっていると思われます。
Appleはどの携帯キャリアにも特別扱いはしない方針なのは有名であり(世界最大のユーザー数を誇るチャイナモバイルの要望すら突っぱねている)、ドコモにも上記の方式がそのまま当てはまると思われます。独自のコンテンツによる収益が見込めない点を考慮すれば、潜在的な収益減はそれ以上かもしれません。
ドコモが考える最悪のシナリオ
もちろん電波状況の良いiPhoneを求めて他社からの流入もあるでしょうが、それもあまり期待は出来そうにありません。ドコモのマーケットシェアは落ちてきたとは言え未だに50%近くある為、既にiPhoneを取り扱っているSoftbankやauとは状況が違います。そもそも国内ユーザーはキャリアメールという強い縛りもあってか、キャリア間の移動には消極的です。MNP利用ユーザーは全体の3%程度だと言われており、auのiPhone取り扱い開始時を見てもその影響は限定的でしょう。
結果的に既存のドコモユーザーの購入が大半となる事は間違いありません。これはドコモの望む所ではない。
他社からの流入による収益増を、既存ユーザーのiPhone買い替えによる収益減が上回る状況。ドコモがiPhoneを導入するに当たり最も恐れているのはここだと私は考えます。
それが高収益を望める物であれば、冒頭で述べたハードルは持ち前の資金力で楽々クリアするでしょう。それだけの体力はドコモにはある。
しかしユーザー単価そのものを下げる可能性が高いiPhoneの導入は、ドコモの収益構造自体を破壊しかねないリスクを帯びている。ドコモがiPhoneの導入を躊躇するシンプルな理由はこれではないかと私は思います。
このドコモの判断が正しいのか誤っているのか。近々リリースされると言われるiPhone 5で一定の答えが出る事でしょう。
自分も、同意です。
Apple 系ブログの中には、iPhone を扱わないドコモを馬鹿呼ばわりする論調が強いですが、よく調べもしないで、いったい何様なのかと。。。
できれば、来たる Windows Phone 8 を搭載した良機種を、ドコモが睨んでくれていると、嬉しいと思っています。
Android と Samsung の組み合わせだけでは、iPhone に対抗するには今ひとつのようですし。